■京・奥嵯峨「祇王寺」の四季

加賀(石川県)の【兼六園】から越前(福井県)の【永平寺】、近江(滋賀県)の【石山寺】を巡って京都嵐山・嵯峨野へ。生れて初めての気ままなのんびり一人旅です。初めて訪れる先々はそれぞれに趣があり、感動の連続で楽しませてくれました。その中でも、祇王・祇女の静かに眠る【祇王寺】にひとしお心を惹かれ、以来、京都を訪れる度に自然と足が向いているんです。
今年も10月下旬、兵庫県ABCゴルフ倶楽部で開催されたマイナビABCチャンピオンシップ最終日観戦と翌日プレーの機会があり、その前日に京都まで足をのばし、紅葉しはじめた祇王寺を訪れました。
■心も癒される嵯峨野・竹林の小道散策

しばらく歩いて行くと百人一首の選者・藤原定家の山荘があったと伝えられる常寂光院。仁王門から本堂へと続く石段の黄色と赤の紅葉のトンネルは見ごたえがあり、柿の実が秋の彩りを添えています。
その隣は釈迦如来と阿弥陀如来を共に本尊とするありがた~い二尊院。門から本堂築地塀までの広い参道の紅葉が続きます。初夏の紫陽花、秋の萩も見逃せません。色づき始めた二尊院の紅葉を土塀越しに見ながら三叉路を左に曲がってなだらかな坂を上っていくと目当ての祇王寺の質素な門が見えてきます。
■ゆったりとした時が流れ、身も心も和んでくる

■祇園精舎の鐘の声、諸行無情の響きあり…

清盛は当世随一のみ目麗しい白拍子(踊り子) 祇王に心を奪われ寵愛しするようになり、祇王は百石百貫の手当てを与えられて母と妹・祇女の三人で安穏に暮していました。
ところがある日、仏御前と呼ばれる白拍子の上手者が清盛の前に現れて舞をお目にかけると、清盛はたちまち心を動かして仏御前にぞっこん心を移してしまいます。
一方、昨日までの寵愛は何処へやら祇王は館を追い出されてしまいます。その時、祇王は、「萌え出づるも 枯るるも同じ 野辺の花 いずれか秋に あわで果つべき」と障子に書き残して去っていきます。祇王と母と祇女の三人は髪を剃って尼となり、世を捨て仏門に入ったのがこの祇王寺だったのです。
しばらくして、母子三人念仏しているところに竹の網戸をほとほとたたく者があり、出てみると、思いもかけぬ尼姿の仏御前でした。祇王の不幸を思うにつれ、「いずれか秋に あわで果つべき」と障子に書き残された祇王の歌を見て、いずれは我が身かと人の世の無常を感じて剃髪し仏門をたたいたのでした。
それからは、4人一緒に寺に籠って朝夕の仏前に香華を供えて、4人みな往生の本懐を遂げられたそうです。
祇王寺の柔らかな木漏れ日の中でじっと眼を閉じて耳を澄ますと、「祇園精舎の鐘の声、諸行無情の響きあり。沙羅雙樹の花の色、盛者必衰のことわりをあらわす。おごれる人も久しからず、唯春の夜の夢のごとし・・・・」の平家物語の美しい書き出しが浮かんできます。人の世のはかなさと物の哀れがじーんと心にしみてくるようです。
■祇王寺の四季の美しさ
祇王寺は小倉山山麓の竹と楓に囲まれたささやかな草庵で、四季折々の風情が楽しめます。
【春】あまりひろくもない苔の庭一面に祇王桜の散る風景は小紋模様のように美しく、藪椿が眼に沁みます。
「まつられて百敷き春や祇王祇女」
【夏】緑一色の苔庭、草庵、山門。若竹の緑の風が静かに通り抜け、とても爽快です。
「短夜の夢うばうものほととぎす」

「いざよいの月かくれにし露の冷え」
時雨に煙る祇王寺、深紅に包まれた草庵。路に、庭に、草屋根に、そして竹藪にも散り紅葉が音もなく重なっていくさまは風情があり癒してくれます。 「五十年の夢とりどりの落ち葉かな」
【冬】なんといっても雪景色。冬枯れの小枝に淡雪がつもり、一幅の名画のような美しい風景が広がっています。
「祇王寺と書けばなまめく牡丹雪」
■ほんのりと京女の温かさが伝わってくる
いっぷく処「つれづれ」の一杯のぜんざい

七福神の育さんもつられてぜんざいを注文すると、「今からお餅焼きますから少し時間かかりますけどよろしおすか?」と品のいいおかみさんの声。美味しいお茶を頂きながらしばらく待っていると、ぷーんと甘いかおりのぜんざいが運ばれてきました。
ちょうどよい甘さかげんで小豆の美味しさたっぷり。焼きたての少し焦げ目のついたお餅はカリッとした歯ごたえがありさすがにうまい!!。おかみさんの温かいおもてなしの心がぎっしりと詰まったぜんざいをじっくり食べていると、「生きていて良かったなあ、幸せだなぁ」という気分になってくるんです。
「嵯峨野の平日や夕暮れ時はひっそりとして寂しいんですよ。でも、そこが嵯峨野のいいところ、嵯峨野の良さなんです。嵯峨野はゆっくりのんびり味わってもらいたいですね。お客さんはいい時に来られましたよ・・・」とおかみさん。全く同感で~す。悠久の時を感じながらのんびりとした時を過ごす。これが嵯峨野散策のだいご味なのでしょうか。
ぜひ一度、嵯峨野の竹林の小道を散策しながら祇王寺を訪れて、帰りには「つれづれ」に立ち寄ってみてくださいね。 七福神の育さんのイチ押しですよ。。
【つれづれ】 京・奥嵯峨二尊院門前町 電話872-5874
(鹿児島・山口・福岡応援団 / 地域交流飛翔会 / 新留育郎)