■2020年新年のご挨拶~前編


2020年 明けましておめでとうございます。
元旦に博多の三社参りの一つに数えられる福津市の宮地嶽神社に初詣。出店が立ち並ぶ参道は大勢の参拝客で賑わい長蛇の列。参道から「男坂」と呼ばれる神社正面の長い石段を60分かけてようやく登り切ったところで一息。後ろを振り向くと、人気アイドルグループ「嵐」が出演したJALのCMで有名になった「光の道」(2月下旬と10月下旬の年2回、参道と夕陽が西に一直線に並ぶ神々しい絶景が見られる絶景)のその向こうに、元旦の太陽の光を浴びてぎらぎらと輝く日本海が広がっていました。いつものことですが、本殿の日本一の注連縄の下で厳かに手を合せ、「家内安全と健康」、「商売繁盛」を祈願してきました。
■2020年は行動の年
戦後75年の節目にあたる2020年。どんな年になるのでしょうか。じっと目を閉じて耳を澄ませば、この国を支える屋台骨が揺らぎ、激しくきしむ音が聞こえてくるようです。「どげんかせんといかん」と東国原英夫氏は立ち上がり2007年宮崎県知事に就任しましたが、今年はまさに、人も、企業も、国のかたちも、「どげんかせんといかん」という言葉がぴったりと当てはまる年だと思います。
私たちを取り巻く環境は大きく変化、内外の情勢は混とんとしていて先行きは極めて不透明ですが、「結果は分からないけれども、とりあえずやってみる」。そこから進むべき道が見えてきて、成長と発展につながってくるのではないでしょうか。「あきらめたらあかん。あきらめないで!」とよく言われますが、「あかん」と思ったら諦めてそこから再出発し、新たなことに挑戦するのもまた真理。2020年は、人も、企業も、国も、「行動の年」だと19さんは思います。その理由は次のような背景から見えてきます。
■実質賃金と可処分所得の減少
国内景気は東京オリンピックまでは何とか維持できそうですが、首都圏の建設ラッシュも峠を越え、企業の設備投資も下降気味で、一部ではオリンピック後のバブル崩壊がささやかれるなど大幅な景気後退藻懸念されています。それでなくても、ここ数年の給与所得者の実質賃金はほとんど増えておらず、消費税増税の影響もあって国民の可処分所得は減少し、特に、子育て家庭や非正規雇用者の生活は厳しくなってきており、経済格差も拡大しているのではないかと危惧されます。「格差社会の是正(特に、同一労働同一賃金)」と「働き方改革」が喫緊の課題となっているようです。
■急速に進む高齢化と少子化
内閣府発表によれば、日本の平均寿命は、戦後の1947年、男性50.06歳 女性53.96歳だったのが、2017年には男性81.09歳 女性87.26歳で、この70年間で、男性は31.03歳女性は33.30歳と飛躍的に伸びており、2050年には女性の平均寿命は90歳を超える見通しとなっており、これに伴い、総人口に占める高齢者比率は、2030年には31.8% 、2050年には39.6%と急激に上昇し、その後は40%前後を維持したまま推移するそうです。
つい先日の発表された厚生労働省の2019年人口動態推計によれば、2019年に生まれた子どもの数(出生数)は90万人を割り、1899年の統計開始以来最少の86万4千人にとどまるとの深刻な数字が示されました。当初の厚労省見込みよりも2年も早いペースで少子化が進んでいます。又、同推計によると2019年の死亡数は137万6千人、出生数から死亡数を引いた人口の自然減は51万2千人に達し、ともに戦後最多を更新する見込みで、婚姻件数も戦後最少の58万3千組にとどまるとしています。国は従来の政策の限界を認め、危機感を持って原因の分析と対策の強化に乗り出す時が来ているようです。
■大きく減少する日本の人口
前述の少子高齢化は日本の人口減少に拍車をかけています。総務省資料によれば、日本の総人口は、2004年の12,784万人をピークに、2030年には11,522万人に、2050年には9,515万人に、2100年には6,407万人と急激に減少し、これは、2016年の関東と関西地区の人口にほぼ匹敵し、言い換えれば、九州・沖縄、中国、中部、東北、北海道地方の今の人口が消え、経済活動の市場が無くなるということです。さらに、今から100年後の人口は、明治時代後半の5,000万人の水準まで減少すると予測されおり、天災地変、戦争のあった年を除けば、奈良時代以降、未だ経験したことのない人口減少社会が到来することになります。
人口が増加し市場が拡大する時代は、法令を守り、真面目に普通に努力さえしていれば何とかやっていけましたが、人口が減少し市場が縮小する時代はそうは参りません。タダ真面目に、普通の努力をしただけでは成長も発展も期待できないのです。
■人口減少社会の中で企業はどこに活路を見出すか?
明治維新以来、富国強兵政策のもと日清・日露・第1次世界大戦を経て驚異的な成長を続けて近代国家の仲間入りをした日本は、第2次世界大戦の敗戦で壊滅的な打撃を受けながらも、日本人の勤勉さと貯蓄精神でそれを乗り越え、企業活動を活性化し、投資を増加させ、市場を拡大しながら世界に類を見ない経済発展を遂げて未曽有の困難を克服してきました。しかしそれは、「人口増加=国内市場拡大」というフォローの環境があったからこそ実現できたということを見落としてはなりません。
人口減少は消費市場の縮小と労働力不足をもたらし、少子高齢化は労働力の活力減退を意味しています。こうしたアゲンストの社会環境の中で、どこに活路を見出していけばいいのでしょうか?その手段として、日本の中小企業でも、変化をチャンスとして前向きに捉え、積極進取のバイタリティを発揮して、①海外市場への進出(グローバル化) ②高齢者と外国人労働力の確保 ③AI(人口知能)の活用 に挑戦する動きが出てきています。
■人生100年時代をイキイキと生き抜く為には
このような社会環境の変化を踏まえて、「人生100年時代」という新語が生まれてきました。人生100年時代と簡単に言いますが、かつて経験したことのない社会環境の変化の中で、私たちはどうやって自分の道を切り開き、生活の糧を確保し、物心両面の幸せを実現していけばいいのでしょうか。そう考えた時、明治維新の立役者、高杉晋作の 「おもしろき こともなき世をおもしろく 住みなすものは 心なりけり」という辞世の句が私の脳裏に浮かんできました。
私たちは、この変化をしっかりと捉えて受入れ、「仕事に生きる」「趣味に生きる」「晴耕雨読の生活を貫く」「地域貢献・ボランティア活動に参加する」「飢えに苦しむ世界の子供たちの支援活動に参加する」といった10年後の自分の生き方・夢をまず描くことが大事かと思います。そして、それに基づいた生活設計・行動計画を立て、それを実現するために、常日頃から体を鍛え、スキルを磨き、知見を拡げ、必要な専門知識・技術を身に着け、必要な資格も取るなどして、その時に備えていくことだと思っています。その為には、「生涯勉強」、「Keep On Going」の前向きの姿勢と人をいたわる「温かい心」、人と人との「絆」、「協調と奉仕の心」が求められるのではないでしょうか。
■広がる政・官の不正と暴走、政治不信
国内の政治に目を向けると、政と官で忖度が横行し、国の政策決定に使用される経済指標でさえ都合のいい結果の出る算式に変えてしまったり、都合の悪いデータの操作や重要書類を廃棄?するといったご都合主義のまやかしの政治がはびこっています。どうも、その場しのぎの対応でお茶を濁し、責任の所在を曖昧にしたままうやむやにしてしまうといった構造的な問題が長期政権の歪となって巣くっているような気がしてなりません。このまま何もしないで放っておくと、公正公平であるべき政と官の不正が民にも伝染して、この国全体が、昨今のかんぽ不正・機密情報漏えいにみられるようなとんでもない方向につっ走っていきそうな危惧さえ覚えます。
だから、2020年は、政治が国民の信頼とともに活力を取り戻し、本来の役目を果たすような方向に転換する年であってほしいと願ってやみません。私たちも、今まで以上に政治に関心を持ち、不正やまやかしの政治を許さず、この国のかたちを問い直させるように声をあげ良識ある政治家を動かしていくことも国民としての使命かと思います。
■世界が抱える様々な脅威
それぞれの国や地域の置かれた状況によって身近な深刻さに程度の差はあるかと思いますが、いま世界は数々の大きな脅威にさらされています。世界中で「地球の環境汚染」が進み、世界のあちこちで「民族対立・紛争」「ポピュリズム台頭と分断」が激化しています。又、自国中心主義がはびこり、国家の安全保障や地球環境保護、自由貿易保護などの政策を国際連合との整合性を中心にして組み立てていく国連中心主義が後退し国際的な協調体制が崩れてきています。
16歳のスウェーデンのグレタ・トゥーンベリさんが、「人類の絶滅は始まりつつある」として地球温暖化対策を必死に訴えても、「バカバカしい。友だちと古き良き映画を見に行けばいい」と突き放したアメリカのトランプ大統領や「ガキ」という言葉で批判したブラジルのボルソナロ大統領など地球温暖化問題に正面から向き合おうとせず、自分に都合の悪い意見には強権で蓋をしてしまう指導者らがまかり通る危機的な様相を帯びてきています。どうやら世界は、世界恐慌の起きた1929年から第二次世界大戦までの保護主義の時代に逆戻りしたかのようです。
自分と異なる意見に耳を傾けて、ベストでなくてもベターで協調して、一歩一歩進めていくことが、問題の解決、発展の早道だとは思いませんか。強権は反対派を作り、争いを増長させ、発展のつもりが衰退を余儀なくされる羽目にもなりかねません。幸い、「どげんかせんといかん」と勇気を出して立ち上がる若い人たちが増えてきています。
これは、企業経営でも言えることですが、優秀な若い人たちがあちこちの職場で力を発揮するようになり活躍しています。若い人たちの意見に耳を傾け、若い人たちを登用し、活躍する場を与えている企業は活力があります。この難局は、経験豊かな熟年世代の知見と技術に若い人の新しい考え方と漲る力が加わってこそ乗り越えることが出来るのだと確信しています。
(2020.1.1執筆)
後編へ続く⇒
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